Waiting Here -Part Seven-


いちばん最初に浮かんだのは足首だった。内側の付け根からスタート。この場所でのコツはナイフの先端だけしか使わないことだ。そうすれば、浅くて、きれいで、まる一日くらいは血が止まらない程度の丁度いい傷をつけられる。小さいけど一歩あるくごとに剥けた肉をジーンズの裾が擦れるんで、痛みを感じ続けるのには十分だ。時間をかければかけるだけ良い。それだけあの至福の時間を長引かせることができるから。

つぎに、最初にナイフを入れたら、そこから爪先までぐるっと刃先を引いていく。ちょうど、靴の外側をなぞるみたいな風に。これも痛くて結構いい。でも一日じゅう保つかといえば、そこまでじゃない。ゆっくり、ゆっくり、できるだけ時間を掛けて、うすうく切っていくのがいい。速いのも時には悪くないけど…時間がないときとか、誰かが急に部屋に入ってきた時とか、それとも気分があまりにも落ち込んでいる時には。でも、やっぱりゆっくりやるのが一番だ。足の裏をぐるっと一周してしまったら、足に火でできた輪っかをはめて歩くみたいなかんじだ。これで一日がんばれる。

でなければ、腿の内側なんてのもいい。なによりの美点は、ここならほとんど誰の目にもつかないってことだ。ここには短くて、平行な傷をつけるのがベスト。あれの後、肛門から内腿を流れて伝わる血とちょうど重なっているような…

でなければナイフの刃の全面を使って、脇腹にやってみるのもいい。ほんとうに切ってしまうんじゃなくて、肌の表面をひっかくというか、皮膚の下の肉をこすってやるような感じだ。このやり方だと、腕を伸ばしたりしたときだけ、あ、痛いな、と気がつくくらいだ。

でなけりゃ膝の裏側もいい。両足に三本ずつ、長い、ぎりぎり深くもなく浅くもないくらいなやつ。これはちょっと動くだけでも傷口が開くから痛みが続いて良い。ただ、ふくらはぎにたらたらと血の跡が残るのが欠点。

決めかねた。どこがベストだろう。一つだけ、手首はもうやらない、ということは決めていた。手首だけはもう二度とやらない。スパイクのために切った、あの時の、ああこれで世界は完璧なんだと思った、あの気持ちを、台無しにすることはできないから。

ザンダーは目をつむったまま、いっしんに一つ一つの切り口を描き出していた。鉄の刃の冷たさ。ガラス片を使ったときの鋭いちりちりした痛み。メタルならざらざらしたかんじ。爪ならラフな、ぎざぎざの傷跡ができる…。

やりたかった。やりたくてたまらなかった。味わいたかった。口の中に自分の血の味が広がるのを、じかに感じたくて気が狂いそうだった。

それから彼は口の中に本当に血の味がするのに驚いて、僅かに頭をもたげた。どうやら寝ている間に唇を噛み切ってしまったらしい。

彼は目を開いた。なんでもいい、何か意識をそらしてくれるものはないか、この苦しみから、血への渇望から、自分を守ってくれるものはないかと、彼の目が狂ったようにあちらこちらにさまよった。だが何を見ても彼の苦痛を深めるばかりだった。けれど彼の目が床に放り出されたままの黒皮のダスター・コートに落ちた時───彼はそれを凝視した。コートについた小さな皺や、見えないくらいの引っかき傷まで、心の中に完全に写し取ろうとするかのように、彼は全神経をかき集めてそのコートをじっと睨みつけた。それ以外のことは何も考えなくて済むように。ほとんどコートに染み付いている煙草の匂いまで嗅ぎ取れるんじゃないかと思うほどに。実際は自分を守るように後ろから抱きしめているスパイクの髪から、その匂いはしてきていたのだったが。

それにしても、まさか眠れるなんて。ザンダーは気付いた。

これまで父に犯された日の夜は、眠れたためしがなかった。泣きわめく心とじんじんする体の痛みを抱えて、朝まで身を丸めて寝返りを打っているのがお決まりだったのに。

けれど昨夜は違った。枕に頭をのせるがはやいか自分は失神するかのように眠ってしまっていた。これは鎮痛剤のおかげじゃない───スパイクがまるでそれが当たり前みたいに、自分をきつく抱きしめていてくれたからだ。

自分から頼んでみたくせに、ザンダーにはスパイクがどんな顔をするだろうかとびくついていたのだった。けれど彼は即座に自分の願いを叶えてくれた。例のように鼻を鳴らして、仕方ねぇなと云われるか、おいおいと呆れられるか、でなければ、そいつはちょっととためらわれるか、どれかだと思っていたのに、そんな態度は一切なかった。ただ、囁いてくれただけだった…尋ねてくれただけだった。彼が、ヴァンパイアが、こうして抱きしめても痛くはないかと、囁いてくれたのだ。

ピンで止められた標本みたいに、彼がベッドにしがみついていたのは、唯一あの質問が、あの優しい言葉があったからこそだった。でなければ彼はとっくにベッドから抜け出してシンクへ向かい、そこに転がっているナイフを取り上げてがむしゃらに肉を切り始めていたに違いない。

脂汗を流しながら横たわる彼の精神をあぶりあげるように、ナイフへの渇望は全身を駆け巡っていた。

解放されたかった。ぬぐってもぬぐっても再現されるあの音と記憶をえぐりだし、どこかに押しやってしまいたかった。もしそれが出来ないというなら、どうしてもあの記憶を目の前から追いやることができないというのであれば、自分は"あれら"に直面するしかないのだ。

"直面する"───それは再び階段の上のドアが蹴り開けられる音を聞き、再び自分の首根っこを掴んでカウチから引きずり出す父親の手を痛みに霞む目の隅で見、再び鼻が床にぶつかった時のぐしゃりという音を聞き、再び腹に蹴りこまれる靴の爪先を感じ、再び自分の背中に乗り上げてくる男から発散するアルコール臭を嗅ぎ、再び自分の中にあれが突き込まれてくるあの痛みを、"また"経験する、ということだ。

───いいや。そんなことは絶対に耐えられない。

解放されたい。

彼の手はリズムを刻むようにシーツをぎゅっ、ぎゅっ、と握りはじめた。手の平が、ある重みを、ナイフの感触を、その手に求めるあまり文字通り痛むほどだった。もう何だって良かった、ただあの記憶を燃やし尽くしてくれるなら。

だが彼はそうしなかった。できなかった。そんな真似をしてスパイクを裏切ることはできなかった。なにが起きたのかは判らなかったし、いつだったかも判らなかったが、自分達は敵と友人との見えない分割線を、どこかの時点で越えたのだ。そのさらに向こうまで越えた時となると、もはや全く見当もつかない。

ただ判っているのは、スパイクが自分を理解してくれているということと、自分もスパイクを理解しているということだけだった。もちろん完全にというわけではない。それでも、理解は理解だった。

スパイクは、自分の身に起こったことを見てもなお、自分を批判したり、ひとかけらの嫌悪も見せたりしなかった。ただひたすら自分を案じてくれたのだ。確かにバフィー達だって心配してくれはした。だが彼女らは見当違いな心配をしているのだった。

だから───だから、彼はどんなに苦しくてもベッドに身を強張らせたまま、彼の知る唯一の恩寵に手を伸ばさずにいたのである。

彼は傷からくる痛みが強い波のように襲ってくるにつれ、震え始めた。どこもかしこもが痛んだ。腫れあがった顔面はずきずきするし、呼吸はそのまま苦痛のエクササイズだ。だが鎮痛剤の瓶はシンクの上に───ナイフの隣にあった。

そこまで行ってしまったら、絶対に自分はナイフに手を伸ばす。

だから、彼は苦痛のほうを選んだ。

彼は痛みをやり過ごそうと一度大きく身を震わせた。意識しないまま、自分の腰に回されている腕をきつく掴んだ。


突然、スパイクの眼がかっと開いた。とたんに部屋中に満ちた苦痛の香りが彼の鼻を刺すように刺激する。腕の中の体から、波のように痛みの感覚が発しては引いていく。

腕を掴まれるまで全く意識がなかった。あんなにぐっすり眠ったのはここ数十年間で初めてのことだ。ザンダーの鼓動が子守唄の役割を果たしたらしく、抱きしめるその温かさと鼓動の響きに、骨までぐずぐずと溶けていくようなむずがゆい幸福感を感じて、そしてそのまま、溺れてしまったのだ。

だが今そのザンダーが、自分の腕の中で痛みに震えている。スパイクはそっと腕をザンダーの体の下から引き抜くと、ザンダーの髪を指でそうっと梳った。

「ザンダー…どうした」

頭を上げて、覗き込んだザンダーの顔色の悪さに驚く。

「ラヴ、大丈夫か?」

「…苦しい…」

のどに詰まったような返事が、きつく目を閉じたままのザンダーの唇から漏れた。

時計に目を走らせる。2:34。ほぼ10時間ぶっ通しで眠っていた計算だ。なんてこった、あれだけしっかり処方箋を読んで、4時間ごとに1錠、薬を飲ませなきゃならないことは判っていたのに。

2錠。2錠も自分はミスったのだ。

身を起こして、スパイクはザンダーをなるべく痛くしないように気をつけながら引き起こした。少年は目を閉じたままだ。

「畜生…薬はシンクだよな。今取ってきてやるが───いつ頃から目が覚めてたんだ」

「一時間ぐらい前…」

スパイクは軽く息をのんだ。

こんなに苦しんでいるこいつを放って、よくも自分は眠りこけていたもんだ。自分自身に悪態をつきながら、痛みにうつらうつらしながらも開こうとしているザンダーの眼に冷たい手を被せて再び閉じさせる。それで少しでも痛みが治まれば、と願いながら。

「なんで起きてすぐ飲まなかった。四時間ごとに飲まなきゃいけないのは判ってるだろう」

「できなかったんだよ…あそこには行けなかったんだ」

返ってきた囁きはほとんど聞こえないくらい小さかった。

「なんで。歩けるだろうが。ったくなんで俺を起こさなかったんだ」

スパイクは枕を背中に当てるようにしてからそっとザンダーを横たわらせた。それからシンクへ行ってバラバラと錠剤を振り出し、コップをわしづかんで水を注ぐと急いで戻る。

水と錠剤を手渡して、ザンダーが感謝に言葉もなく頷いて、それをごくごくと飲み下すのをじっと見下ろした。

「次は。俺を起こせ。」

声に命令の響きが混じっていたのを自分でも感じ、さらにザンダーが怯えたようにぴくんと身を強張らせるのを見て、彼は口調を和らげた。

「歩けないほど痛みがひどいなら、俺が代わって取ってきてやる。そう言ってるんだ。判ったな?」

「…そんなんじゃない…ただあそこには行けなかっただけだよ、」

ザンダーは目をゆるゆると開いたが、視線は伏せたまま、自分の手を見降ろしているだけだった。

「あ、あそこには料理道具があるから…瓶の隣にナイフがあるから…」

声が掠れた。深呼吸して、ザンダーは驚きに凍りついているスパイクを見上げた。

「あそこに行ったら、僕はあのナイフを使う。でも、それはできないから…したくなかったから」

ザンダーの声はまた途切れた。

「君と約束したから。でも、今やりたいのは僕にはそれしかないんだ」

スパイクの口が僅かに開いた。なんてことだ。そして同時に、そうだったのか、と思う。

彼はすぐにもザンダーに覆い被さって、息もできないほどきつく抱きしめてやりたい衝動を必死でおさえた。

そうだ、自分だって本当はそう思っていたんじゃないのか。目が覚めてみれば自分はベッドに一人きりで、代わりにザンダーの血の匂いだけが、部屋中いっぱいに満ちあふれているんじゃないか、と…。

何を考えていやがると、少年を責める気になどなれなかった。そんな目に遭ったことのない自分だ。もし自分がザンダーの立場にあったとして、絶対にお前のようなやり方はしないなどと言い切れるだろうか?スパイクにはそんな自信はなかった。

ザンダーはずっとスパイクを見上げていた。スパイクはどんな反応を見せるだろう?怒らせたくはなかったけれど、でも嘘はつけなかった。(注1)

彼はスパイクの口が一度開かれ、それからぎゅっと引き結ばれると、彼が何か心に決めたように、一度ちいさく頷くのを見た。それからスパイクはきびすを返すと、落ちたコートに歩みより、床に膝をついてポケットを探った。それから立ち上がって、そのまましばらく手の中のものをじと見下ろしていた。その均整の取れた背中のラインから、スパイクが何事かをひどく思いつめているのがザンダーには感じ取れた。

何を逡巡していたのかは判らない。けれどスパイクはまたもとの場所に戻ってくると、何の表情も浮かべずに、ザンダーをしばらく見下ろした。それからどさりとザンダーの隣に腰を降ろす。手を伸ばし、スパイクはザンダーの右手を取って引き寄せ、裏返した。真正面から少年の瞳を覗き込み、そして手にしていたものを開かせた手の中に置く。

ザンダーはその小さな重みのあるものを見下ろした。鍵だった。ナイフを封印した、あの鍵だ。

びっくりして、彼は静かに自分を見つめるスパイクを見た。

「やれよ。それで気分が良くなるんなら。やり終わったら俺が手当てしてやるよ。」

ザンダーは呆然と吸血鬼を見上げた。その目は苦しげな光を湛えていたが、同時に自分への理解が宿っていた。

身動きもできず、言葉も忘れて、ザンダーは目の前に黙って座る吸血鬼を見つめていた。スパイクが差し出す自分への信頼は、ザンダーの想像をどんな意味でも超えていた。いつのまにか、彼はいやいやをするように首を振っていた。

できない。もうどんな痛みも欲しくない。

もう隠しつづけるのは嫌だった。解放を求めて暗い精神の内界をひとりぼっちで彷徨うのも、もう嫌だった。今、自分の人生で思い出せる限り初めて、自分の苦しみを語れる相手が、自分の話を聞いてくれる相手が、そして自分を判ってくれた人が現れていた。

もうどんなにナイフが欲しくても、彼は刃のもたらすひとりぼっちの世界に戻りたいとは思わなかった。

「いいや。しないよ。」

返ってきた返事に、スパイクは驚いた。なんだって?こんなに血に餓えて、苦痛のなかに逃避しちまいたいと、そう全身が叫んでいるのに?

たとい死ぬ寸前までザンダーが自ら傷つけることになろうとも、彼は少年に知っておいて貰いたいことがあった。それは、お前が望むことならば、それが何であれ、俺はかならず手に入れてやる、ということだった。たといそれが、このナイフであろうとも。

「…ザンダー。お前にも、俺が本当はそんなこと望んじゃいないことはわかっていると思う」

スパイクは言葉を切った。

どんなことでも───こいつが必要だと言うのなら。

俺は、それを与えよう。

スパイクは続けた。

「でもそうすることが必要なら、構わない。やれよ。ただ俺はここにいて、お前が行きすぎないように気をつけていてやりたいんだ」

バスルームに倒れていた時のザンダーの姿が目の前にちらついて、スパイクは一瞬目を閉じた。

「違う」

今度の答えははっきりとしていた。

「ちがう、そんなんじゃない。───ね、覚えてる?君は僕に、ナイフに手を出さなくてもやっていけるようにしてやるって言ったじゃないか」

それは…確かに言ったが。

スパイクは困惑したものの、頷いた。ザンダーは一度目を閉じると、深く息を吸いこんだ。

「よし。じゃあこうしよう。僕がまたナイフに手を出しそうになったら、すぐ正直に君に云う。そのかわり、君は毎朝、朝食の時間に、あいつを殺す方法を一つ考えて僕に話してきかせるんだ」

二人の目が合い、やがて凶悪な笑みが二人の口元に揃って浮かんだ。スパイクがふむんと頷いた。

「いいだろう。ご注文にお応えしてみせようじゃないか」

ザンダーもこくんと頷く。それからそろそろと足を床に降ろし、立ち上がった。

部屋中に張り詰めていた緊張が緩んでいくのを感じる。彼はバスルームに向かった。さっぱりとした熱いシャワーを浴びて、体の節々の凝りを洗い流したかった。

スパイクが自分の後をのこのこついてくるのに気が付いて、ザンダーは吸血鬼の胸をどつく。

「ヘイ、風呂まで君と一緒に入るつもりはないぜ。まずは体を洗わないと、家を探しに行けないだろ」

家のことをふいと思い出して、ザンダーは現金にもわくわくしてきた。あまり高い家賃は払えない。今やっている建設工事の仕事はあと数ヶ月で終わってしまうから。けれどどんな場所だってここよりはましなはずだ。

今までは出て行くなんて考えるのも怖かった。一人きりの家で、たった一人で、自分の思考と向き合うことになったらどうなるかと、それを考えるだけでしり込みしていた。けれど今はもう一人じゃない。

それに付け加えれば、彼はもはやどんな幻想も抱いてはいなかったのである。この地下室にとどまっている限り、自分に生存のチャンスはない。父親が自分を殺すか、自分で自分を殺すかのどちらかだ───故意であろうとなかろうと。彼はバスルームのドアを閉めると服を脱ぎ、包帯を解くという慣れた作業に取り掛かっていった。

 

スパイクはドアが閉まるやいなや煙草をひっつかんだ。眉をしかめて、そういえばこの二週間の間に、いつのまにかあいつがいないときしか自分は煙草を吸わなくなったと気付く。

冷蔵庫から血液のパックを取り出し、レンジで温めると、彼はちびちびそれを啜った。

昨夜のことが思い出される。どこかで、何かが起きて、自分とザンダーの間に強い絆が生まれていた。ザンダーもそれを感じているらしい。

自分は夢や幻とは無縁の性格だった。だが自分はあの少年に傾いていっている───まっしぐらに、どうしようもないほどに、傾いていっている。

あの少年は(まだ二十にもなってないのだ!)あの体の中に底知れぬ闇を抱えている。にもかかわらず今まで会ったことがあるどんな人間やヴァンパイアや悪魔よりも勇気があった。それに、あの魂の純粋さ。それはまるで、闇に塗りこめられたスパイクの世界を照射する、一筋のビーコンのようだった。

…自分の中に取り込んで、呑み尽くしてしまいたい。

かなり意識を集中すれば、彼はかすかだがザンダーの味を、まだ口の中に思い出すことができた。

自分達がリンクされたのはおそらくあの時だろう、とスパイクはあたりをつけていた。

吸血鬼と血を吸われた相手とは、実は常に一種の紐帯が形成される。しかしそれはふつう長続きしない。相手が死んだり、逆に吸血鬼に変成したら、絆はその時点で消滅してしまうからだ。今回はそのどちらにもならなかった。自分はザンダーから奪ったのでなく、自由意志に基づいて指し出されたものを受け取った───強引に飲まされたといったほうが正しい気がするが───にすぎない。

ザンダーの血の味は、彼にとうの昔に失われた天国を垣間見させてくれた。

彼に温かな太陽の光を浴びるとはどんな気分がするものだったかを、思い出させてくれたのだ。

 

ザンダーは慎重に、あまり鏡を見ないようにしながら体を乾かしていった。顔なんて酷いもので、鼻を整形しているバンドエイドでも、どす黒い痣の痕がパンダみたいについている目を(道理で目がちゃんと開かなかったわけだ)カバーできていなかった。

(やれやれ、酷いありさまだ)

彼は素早く身じまいを整えると外に出た。スパイクはぼんやりと宙を見つめている。指に挟んだきりのシガレットから、煙がうすく漂っていた。

「さて、これでどう?さっきよりはれっきとした善意の市民にみえるだろ?」

ザンダーは元気良く言った。スパイクは視線をあげ、ザンダーを見、その姿に思わず忍び笑いを零さずにはいられなかったらしい。

「そうだな。その格好なら間違いなく第二のチンピラが寄ってきてくれるだろうな。お前の恋人だってその姿を見たら、お前のケツを容赦なく蹴り飛ばして家からおん出すこったろうよ。もちろんランプで頭をカチ割った後でだ。」

「はいはい。僕の変装はなかなかうまく行っているってことさ。」

ザンダーは笑ってみせた。

それにしてもスパイクのでっち上げた話は良くできていた。鼻のことも、こんなに急いで引越しする理由もぜんぶ説明できる。それから、あれまあ、とザンダーは頭を振った。こんなに次々と嘘がおもいつくなんて、全くヴァンパイアの悪い影響だ。

彼はキッチンカウンターの上に投げ出しておいたサイフと車のキーを掴んだ。一瞬だけ、そこに置かれたナイフに視線を引き摺られたが、それには指一本触れなかった。スパイクがわざとそこに放置しておいたのだ、と云われなくても判る。

大きく息を吸って、スパイクの目をつかまえた。

「さて。じゃあ行ってくるよ。こんな宮殿のようなとはいかないけど、とにかく住める家を見つけてくる」

彼はスパイクがなにか話し出そうと口を開くのを見た。

「そして、もし今夜中に移動できないとなれば、どこでもいい。ホテルを取るよ。僕ももうこんな所にはいたくないんだ」

スパイクがよしよしと満足げに頷いた。どうやらスパイクの言いたいことをうまく当てたらしい。

「それとも一つ。取引を忘れるなよ。ウチの親を殺そうなんてしないこと。」

彼はスパイクの目に黄色い光がちらつくのを見たが、それは無視した。

「よしと。じゃ、行ってくる。 日没前には戻るよ」

スパイクはドアまでザンダーのあとに未練がましくついていった。自分の目の届かないところへなんか行かせたくはない。けれどヴァンパイアの彼には、ついていくことなどどうやったって不可能だった。

二人は一瞬、玄関口で立ち止まった。それからザンダーがドアをほんの少しだけ、太陽の光がなるべく入らないように小さく開ける。向き直って、彼はとつぜんスパイクの頬に手の甲を走らせた。

「帰ってくるまでここにいるって、約束して。」

「約束しよう。お前は戻ってくると約束するな?」

「うん。約束する」

それだけ言って、彼は身を翻してドアから出て行った。

 *

五時間後。

ザンダーは転げるように階段を駆け下りてきた。完璧な物件を探し出してきたのだ。古い倉庫のロフトなのだが、ザンダーはスパイクが倉庫特有のだだっぴろい部屋とか、古い機械とか、埃っぽい匂いとかが好きだと知っていたのである。しかも家賃は格安だ。たぶん、人間が住むことを考えて作ったわけではないからだろう。

でもエレベーターが一基あるし、ベッドルーム3つにバスルーム2つ、でかいキッチンとだだっ広いオープン・スペースが一つ。おまけに前の賃貸人が家具をいくつか残していってくれていた。まあ、かなり酷い代物だけど…でもタダなのだ。

問題はベッドが一つ、主寝室にどかんと一個しかないということだった。でもキングサイズベッドである。だからザンダーはまあいいやと思った。スパイクと一緒に寝るのがだんだん好きになってきていたから。

ここまで考えた時、彼の思考は急停止した。いや、実は今の段階ではこまで考えてはいなかった。いろんなアパートを見て回りながら彼が考えていたのは、ただスパイクが気に入るかどうか、不動産屋が売り込む甘い言葉を聞きながら考えていたのは、ここを見たらスパイクがどんな皮肉っぽいコメントをするかな、ということだけだったのだ。

ということは、一日中スパイクのことばかり考えていたわけである。何か不安になったり、あのことが頭に甦ってきそうになったりするたびに、彼はあのダスターコートのことを考えたのだから。そうしたら不思議に直ぐに心が静まったのだ。

なぜなのか、その理由については考えたくない。ただ今は、この感覚を純粋に楽しんでいたかった。

「スパイク、ヘイ、どこ?いいところ見つけたぜ!」

呼ばわりながら彼はドアを開けた。そしてそのまま、バカみたいに口をあけて立ち尽くした。

地下室にあったものはすっかりパッキングされて、残っているのは窓に下がったカーテンだけだ。その他のものは一切合財大量の箱に詰められて、きれいに積み上げられていた。中に入れたものを書いたリストまで、ご丁寧に箱ごとに貼り付けられている。しかも箱だけではない。最後の一箱の上にかがみこんでメモをとっているブロンドの頭が目に入る。スパイクは、ちゃんと居てくれたのだ。

ザンダーの顔に、凄い、ありがとう、 どうしようスパイク、などなどの感情が踊っているのを見て、スパイクの顔にちらっと微笑が走った。

「おいおい」

彼は入り口を開けっ放しにしたまま突っ立っているザンダーの歓喜の表情に全く気がつかないふりをして、指をピンと立ててドアを示した。

「Bloody hell、坊ちゃん。そのドアを閉めてもらえませんかね。お日様+吸血鬼=発火してオシマイ。───判ってんだろが」

彼はザンダーが出かけるやいなやこれを始めたのだった。やることがなくて暇だった、というのが理由の一つだが、大部分はザンダーを一人で行かせねばならなかった自分への怒りを紛らわしたかった、というのがそのほとんどを占める。

「スパイク…こいつは…ありがとう、ほんとに凄いや」

やっとザンダーの顔に笑顔が戻る。

「これなら日が沈んだらすぐに引越しできるよ」

信じられない。あとは車に積んでエンジンをかければいいだけだ。

「じゃ、家は見つかったんだな?」

ザンダーの体から、明るい高揚した気分が流れ出てくるのを感じる。彼の少年はずいぶん見違えて、背筋も伸びているし、しっかりした態度で振舞うようになっていた。いい傾向だ。まったく物事はかくあるべしだ。

「そうなんだ、凄いいいんだよ。古い倉庫の最上階なんだ」

ザンダーはスパイクがおお、というように表情を改めるのを見た。

「凄い広いんだぜ。ベッドルームは三つだろ、バスルームは二つ、キッチン一つ、で、だだっぴろいオープンエリアがあって、しかもいくつか家具も付いてるんだ。それから何だと思う?窓だよ!凄いでかいシャッターがついてるから、僕らがわざわざ板張りもなにもしなくて済むんだ」

もの凄い早口になっているのは判っていたが興奮しきっていて止まらない。

「家賃もべらぼうに安いんだ。そしてなんと、CATVケーブルまで全室についてるんだぜ!まあ、たぶん、どっかから盗んできたやつだとは思うんだけどさ、でも君はそんなこと気にしないだろ?」

スパイクは少年の興奮が自分にも移ったように感じていた。聞いただけででも結構な場所のようだ───唯一気に入らないのは寝室が三つ(てことは、もう添い寝は終わりってわけだ)、という点だが。

それからザンダーがずっと"we(僕ら)"ということばを使っているのに気付かないわけに行かなかった。

「じゃ、そこはもう俺たちのものなんだな」

彼はさりげなく言ったが、目はしっかりとザンダーの反応を探っていた。彼はザンダーの手が上がったのを見て、自動的に後ずさった。杭を持ってるのか?しかし代わりに見たのは、弧を描いて飛んでくる銀色に輝くものだった。反射的に受け取めて、それがキーだと気付く。と、良く見れば、リング型のキーホルダーに大きく"S"と彫ってあった。なんだ?という目で見上げれば、ザンダーも同じキーホルダーをちゃらちゃらぶら下げて見せ、ただしこちらには"X"の文字。

「こうしとけば、ごっちゃにならないだろ?」

それからしばらくの間、二人は互いににやにや笑ってばかりいた。わくわくとした興奮が部屋からあふれそうだ。二人は出て行くのだ!

スパイクが最初に目をそらした。ザンダーを抱き寄せてキスしたい、というほとんど抗い難い衝動が急にこみ上げてきたからだ。もちろんそんなことができるわけがない。

「で、みんなにはなんて云うつもりだ?」

「云う?何を?」

ザンダーは忙しくドア口まで荷物を引っ張りながら聞き返した。興奮のあまりからだがはじけ飛びそうだ。自分は出て行くんだ、ストレッチャーに乗せられてでもなく、ボディ・バッグ(注:死体を入れる黒いビニール袋)に詰め込まれてでもなく、自分の足で、歩いて、出て行くのだ!まるで彼は全世界が自分の手に入るような気がした。

「突然ヒナが飛べるようになったことをだよ」

アホかお前は、とでも言うような響きを滲ませてスパイクが言った。

「引越しのことさ。連中、興味津々になるんじゃねえのか」

スパイクが心配していたのは実にこの点だった。ザンダーはどう説明するつもりなのだろう?あの、ザンダーが"友達"とか呼んでいる阿呆どもは、1たす1は2どころか、11なんていう答を出しかねない連中なのだ。

「ああ、そういうことね。給料があがったんだよ。これまでずっと引っ越そうっては考えていたんだけど、やっと決心がついて今日そうしたって言えばいいんじゃない」

スパイクは、ほうほう、と聞いていた。じんわりと誇らしい気持ちが湧いてくる。ザンダーは自然に嘘を吐くことを学んでいる。他人が聞きたいと思うように話を脚色することさえできるようになった。これも自分の熱心な教育の賜物だ。

「じゃあ、俺たちが一緒に暮らしてるってことについては?」

本当はこれについては聞きたくないんだが、と思う。この楽しい瞬間をだめにしたくない。だがザンダーがどこまでこんな状況を続けようと考えているのか知りたかった。

「そんなこと全く連中の知ったこっちゃないね、」

It's none of their bloody business、と言い切ってから、ザンダーはまたにやっと笑った。なにかっちゃBloodyを付けるのはスパイクの口癖で、まったくたいした影響力だ。たった二週間ですっかりスパイクの喋り方が移ってしまっている。

スパイクの眉がこの言い回しを聞いてきゅっと上がったが、彼にはそれ以上追求することはできなかった。窓の一角にある隙間から外を見やれば、太陽はもう沈んでいる。

「よし。じゃあ俺はダンボールから始めるぜ。こんなところにこれ以上グズグズしてられん」

 


三時間後。

へとへとに消耗した人間と、同じくへとへとに消耗したヴァンパイアは、キングサイズベッドに仰向けに伸びていた。

「Bloody fucking hell、エレベーターがあって大感謝だぜ」

スパイクがうめいた。

「Uh huh」

かったるそうな返事がかえる。

「あんなに荷物があるとは思わなかったなァ」

スパイクが続けていった。

「Uh huh」

「だいたいよ、普通あんなふうにあっちこっちにカウチを動かせなんて云うか?何回だ?6、7回は動かしたよな、ええ?お嬢さんよ」

「Uh huh」

「それに誰かさんが小物を買い揃えに行きたいなんてギャアギャア云わなきゃこんなに疲れやしねぇよ」

「Uh huh」

「その次にはタオルとシャワー・カーテンときた。お前、この俺にウォール=マートなんかに行かせたからには、これからどんなツケを払うことになるか判ってんだろうな?」(注:Wal-Martはアメリカ最大のスーパー・チェーン店。日本のダ*エーやイトーヨー*ドーに当たる)

「Uh huh」

「それに誰かさんがきちがいみたいに、"俺のだ!ここは全部俺のだ!"なんて叫びながら走り回ったりしなきゃあよ」

「Uh, スパイク、それをやったのは君だよ」

「ああ。そうか。…俺は気に入ったぜ、ペット」

「よかった。そう云ってくれると思ったんだ」

二人は並んでひっくり返っていた。ついにスパイクは身をよじってザンダーの顔を見下ろした。今日は最高だった。

ザンダーは、まず両親に出て行くと云いに階段を上っていった。もっともその前に、三分以内に戻ってこなかったらスパイクは上階に踏み込んでいいという約束をザンダーは取り付けさせられてしまったが。しかし実際は30秒しかからなかった。スパイクはドアに耳を押し当てて、会話をすっかり聞いていた。

ザンダーはずかずか入っていき、云ったのはこれだけだった。

「アパートを見つけたんで、僕は出て行く。僕宛の手紙は転送されるよう手配しておく。じゃ。」

ザンダーのキーのがちゃがちゃいう音が聞こえて、それからバタンと乱暴にドアが閉まった。いい感じだ。スパイクは気にいった。つまりザンダーは親に住所を教えなかったのである。これで完全にあのクソ親とも縁切りだ。

それから二人はアパートへ向かった。階段のすぐ下に駐車場があって、二人はせっせとダンボールをエレベーターに運んでいった。ザンダーはドアの前でスパイクに目を閉じさせ、《中に入るまで目を開けちゃダメだよ》スパイクをアパートに引き込んだ。それから囁くような声で云う。

「オーケイ。さあ目をひらいてもいいよ」

見た瞬間、彼は気に入ってしまっていた。彼はザンダーに向き直ると、まるで街の不良少年が仲間にやるように腕を肩に回して言っていた。

「服はともかく、一応お前にもセンスってもんがあるんじゃないか」(注2)

ザンダーはけらけら笑うとスパイクを案内して回った。終点はベッドルームだったが、どちらもアパート全部でベッドは一つしかない、という点については指摘するのをひかえた。

二人はどんどん梱包をといていったが、途中でスパイクはザンダーが自分たちの服と私物の箱を主寝室に運んでおきながら、梱包をほどいていないのに気がついた。ということは、ザンダーはこれからも一緒の部屋で寝起きしたいと思っているのだ!

二人はうきうきと夢中になって仕事をした。

やがてザンダーのお腹がぐうと鳴り、それから───おい、食べ物がないじゃないか!

買い物ツアーの始まりだった。ミルクとパンとシリアルを一気に買い込んで、そこまでで所要時間は約二分。ついでザンダーはバナナを掴み、一方のスパイクはクッキーを見つけた。それからふたりしてアイスクリーム売り場で鉢合わせる。

アパートに戻って、以上の豪華なディナーをむさぼり喰ってから、ザンダーはシャワーを浴びに行き───シャワーカーテンがないことに気がついた。

15分に及ぶ押し問答の末、スパイクはようやくWal-Martへの買出しに付き合うと同意した。駐車場にうろうろしている人間がいたら少々脅かしても構わない、という約束をザンダーから取り付けたからである。

二人はWal-Martでも我を忘れるはしゃぎぶりだった。いまや我々は皿やコップやタオルのオーナーなのだ!借り物なんか一つもない。───帰り道を半分まで戻ったところで、二人は肝心のカーテンを買い忘れたことに気がついた。

Wal-Martへ逆戻り。

さらにどっちを選ぶかについての15分に及ぶ大激論の末、二人はシャワールームが二つ在ったことを思い出し、ザンダーはサカナ模様のを、スパイクはオール・ブラックのシャワーカーテンを購入。

外に出て車に乗ったところで、おい、ベッド用のシーツがないじゃないか!

舞い戻ったWal-Martでは、レジの女性が二人に向かってにやにや笑いかけてきた。またもや論争。ついに妥結。杉綾模様の掛けぶとんと黒のシーツで折り合う。

車に戻り、やっと家に帰った。

家。

スパイクにはまだ信じられなかった。自分が家を持つなんて?しかも一緒に暮らす相手がいるのだ、一緒にいて欲しいと云ってくれる相手が。

彼はふう、と長い吐息をついた。

「どうしたの、エンジェルみたいに陰気な溜息ついちゃって」

ザンダーが欠伸しながら言った。

「あの野郎と俺を比較するんじゃねぇ」

スパイクは答える代わりに脅しかけた。

「単にこの場所に満足してるだけだ」

「ああ…僕も、君がここにいてくれて嬉しいよ」

眠たげな声だった。

「そろそろ寝なきゃね」

「だな」

満ち足りた気分のまま、二人は黙っていた。

「スパイク」

「なんだ」

「僕ら、ベッドに入ったほうがいいんじゃないかなあ…」

「かもな」

数分過ぎた。

「ザンダー」

「ん〜?」

「もし俺たちがベッドに行くなら、まずは動かなくちゃならないぜ」

「ん〜…」

数分後,こんどはザンダーが震えだした。

「OK、判ったよ。寒いったらない。君は何も感じないかもしれないけどね」

ザンダーは立ち上がった。慎重にシャツを脱いで、それから一番好きなフランネルのパジャマを掴む。なんだかスパイクの前では着替えたくない、という理由でバスルームに向かった。手早く着替え、歯磨きをしてから裸足で寝室に向かうと、もうスパイクは毛布を被ってベッドにもぐりこんでいる。傍には脱ぎっぱなしの服が落ちていた。

"神さま、どうかスパイクがパンツくらいは履いてますように"短い祈りを捧げてからベッドにもぐりこみ、寝返りを打つと、スパイクの腕がいつものように彼のウェストに回された。

ザンダーの口元に淡い笑みが浮かび、彼はすうっと目を閉じる。ちょっと後ろににじり寄り、スパイクの胸に自分の背中を押し当てた。シルクのシーツの微かな衣擦れの音がした。

(これでよし)

「お休み,スパイク。」

「お休み、ラヴ。」

「…あのさ、スパイク?」

「ああ?」

「…一緒にきてくれて、ありがとう」

「お前が望むことなら何でもしてやるさ」

「僕もだよ。君が望むことなら、何でもするよ」

スパイクはわずかに躊躇ったが、しかしザンダーの首の付け根にそっと優しいキスを一つ、落とした。ザンダーはただ、満足したような溜息を漏らしただけだった。

家。

そうだ。

二人はついに、ほんとうの家に辿り着いたのだった。


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言わずもがな?の訳者注記(必要ねえよと思われる方、どーぞ読まないでください)

注1 「怒らせたくはなかったけれど、でも嘘はつけなかった。」 

ザンダーは自分で買った鋼鉄製のナイフを封印し、スパイクにその鍵を預けて「もう二度とカットしない」と約束したが、じっさいはそのナイフでなくともガラス片や自分の爪でも代用が効くのである。だがあの時点ではそのことを正直に云わなかったので、ザンダーは一種の沈黙の偽証をしていたことになり、それでスパイクが騙されたと腹を立てるのではないか、と恐れたわけである。でもこのときにはもうスパイクに隠し事は一切したくない、という気持ちになっていたわけですな。うふ〜ん。

注2 「服はともかく、一応お前にもセンスってもんがあるんじゃないか」 

ドラマ「Buffy」でのザンダーの服装センスが、某オー*ンド・ブルームより酷いのは有名で、赤いチェックのズボンに黄色めのアロハシャツを引っ掛けたり、とにかく凄まじくミスマッチな格好をして登場する。一方でスパイクは黒が好きで、ブラックのジーンズにぴったりしたブラックのTシャツ、たまに上に真っ赤なシャツを引っ掛けたりもしているが、つねに黒い皮のロングレザーコート(ダスターコート)を翻して颯爽としている。ブーツも黒。エンジェルも似たような黒尽くめの格好をしている。吸血鬼は長生き(?)なので、どうやらシックなスタイルが好きらしい。ちなみに元彼女のドル−にいたっては、1800年代の東欧の貴族令嬢みたいな総レースのドレス(ただしやっぱり色はまっ黒)を着ている。(シックもシックというか、そんな格好で現代のアメリカをうろついたら目立つんでないの?…とは聞いちゃいけないんだろーな)

 

 

 

 

 

 

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